原則的に、社員が自分の判断で家に持ち帰って仕事をしたのでしたらその時間は法律上の残業とはなりません。そのため、残業代を支払う必要はありません。
もっと詳しく
給料が発生する労働時間というのは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいいます。
では、どうやってそれを判断するかというと、「労働者の置かれた状態を客観的に見て使用者の指揮命令下にあるかどうかで判断する」というのが判例や通説となっています。
質問のケースでは、会社が社員に対して持ち帰って仕事をすることを命令していないようですし、持ち帰って家で作業していたということで会社の指揮命令下から外れていると判断されるので、労働時間を延長したことにはならずに残業代の支払いは必要ないということになります。
ただし、例外があります。
それは「黙示の業務命令」です。
例えば、会社や上司が社員に対して指示した仕事量を客観的に判断して、所定労働時間内ではとても終わらない場合、具体的に残業命令が出ていなくても「残業してでも終わらせろ」という命令が出たとみなされる場合があります。
つまり、社員に与えた仕事の量や納期が客観的に見て明らかに厳しいものであった場合、社員が勝手に家に持ち帰ったとしても、残業命令があったとみなされる可能性があるということになります。
そのため、具体的に指示した仕事の量、納期によっては判断が変わってきますので、十分に注意が必要です。
そもそも仕事を持ち帰ることは問題では?
家に持ち帰るということは、仕事関係の書類やデータを社外に持ち出すということになります。
これは、紛失や情報漏えいの危険性もあり、あまりお勧めできません。
自社の情報だけでなく、取引先にも影響がある場合も考えられます。
そのため、機密管理・情報管理という側面からも規則を整備し、社員に教育を徹底し、仕事の持ち帰りをさせないようにするといった対応が必要な場合もあります。
残業代の問題だけでは済みませんので、一度社内でしっかりと協議し、必要な対応を取ることをお勧めします。