社員が不祥事などを起こしたときに提出させる書類として、顛末書や始末書がありますが、そもそもこの2つは何が違うのでしょうか?

一般的に、不祥事などの具体的な内容、客観的事実、その背景事情を記載したものが顛末書です。

それに対して始末書は、上記の顛末書の内容に加え、不祥事に関する反省や謝罪などを含んだものをいいます。

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始末書と顛末書ですが、法律上は具体的な定めはありませんが、一般的には次のように区別されていることが多いです。

 

顛末書

顛末書は、以下の内容が書かれた書類

1.不祥事などの具体的な内容
2.客観的事実
3.その背景事情

(簡単に言うと、いつ、誰が、どんなことをしたなどの事実)

始末書

始末書は、以下の内容が書かれた書類

1.不祥事などの具体的な内容
2.客観的事実
3.その背景事情
4.不祥事に関する反省や謝罪
5.同じことを繰り返さないためにどのような点を改善するか
6.同じことを繰り返さない誓約など

上記を見ていただけると分かる通り、始末書も顛末書も1番から3番までは同じ項目が並んでいます。

 

始末書は顛末書に比べて、4番から6番が増えています。

 

つまり、顛末書は単純に不祥事の具体的事実が記載されたもの

 

始末書は、顛末書に加えて、不祥事の反省・謝罪・改善点などが加えられたものとなります。

 

始末書と顛末書の大きな大きな違い

上記の違いだけを見ると、会社としては「問題が起きたときに始末書さえ取ればいいじゃないか。」となります。

 

項目が多いわけだし、社員本人の反省や謝罪も欲しいに決まっているので当然そう考えます。

 

しかし、大きな問題点があります。

 

 

それは、会社が社員に対して始末書の提出を強制できないという点です。

 

 

始末書の提出を社員に拒否されると会社としては非常に困ることになります。

 

 

何故なら憲法では「思想・良心の自由」が定められているので社員にはその自由が認められています。

 

しかし、始末書には「社員本人の反省・謝罪・誓約など」が含まれています。

 

 

そのため、会社が社員に対して始末書の提出を強制しようとすると、「思想・良心の自由」に関する問題が起きると考えられるからです。

 

 

最近の判例では企業秩序を維持するために始末書の提出を強制できるとするものもありますが、始末書の提出を強制することで無駄な争いを発生させるのは得策ではないと個人的には考えています。

 

顛末書であれば、提出を強制できる

実は、始末書と違って顛末書であれば提出を強制できます。

 

上記のように考える理由の一つがこれです。

顛末書の内容は、不祥事の具体的事実の報告と確認です。

 

この内容であれば、憲法に定める「思想・良心の自由」に関係ありません。

 

そのため、顛末書であれば会社は社員に対して提出を強制できるとされています。

 

 

不祥事を起こしておきながら、始末書の提出を拒否するような社員の場合、将来的にまた何かをやらかす可能性が高いと考えられます。

 

ということは、将来的に何かしらの懲戒処分を科す可能性もありますし、最終的にはやむを得ず解雇をするという可能性もあります。

 

その時に、今まで犯してきた不祥事の記録や証拠が残っているかどうかというのも大きなポイントになります。

 

そして、顛末書には具体的な事実が書かれているわけですから、その証拠になります。

 

 

それであれば、始末書の提出を拒否された時に、会社としてはその提出を強制するのではなく、それであれば顛末書を提出させれば良いと考えが成立するというわけです。

 

 

ちなみに、顛末書すら提出を拒否した場合は、業務命令に従わなかったことを理由に就業規則に基づいて懲戒処分を行うことが有効であるとされています。