一般の人は、ネットで調べても解釈を間違えることが多い!
最近は、一般の人でも簡単に法律上の話をネットで調べることができるようになりました。
そして、それを元にして権利を主張したり、会社に是正を促したりするわけです。
正しい権利主張そのものを否定はしないんですが、一般の人たちはこの「ネットで調べるという行動」の際に解釈を間違えることがすごく多いんです。
つまり、間違った情報を鵜呑みにしたり誤った解釈をしたりした結果として、誤った主張をしたりして会社を困らせるわけです。
社員が勘違いするよくある事例その1
よくある事例として、どんなことがあるかというと
あるとき、社員が会社の備品を故意に壊したことがありました。
もちろん会社は、その社員に対して、賠償請求をしたんです。
一旦は、その社員も「弁償する」と言ったんですが、何かを調べてきたのか次の日にこんなことを言ってきました。
「会社は社員に賠償請求をできないって労働基準法の第16条に書いてある!」
ちなみに労働基準法の第16条は、こんなのです。
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
ちょっと分かりにくいですよね。
これを翻訳すると
損害賠償を社員に請求することを禁止しているわけではなくて
「入社して、パソコンを壊したら損害賠償を30万円とする」とした契約や「年に3日休んだら罰金2万円」のように一定額を支払うことを約束した契約は禁止!
と言っているだけです。
実際にこうむった損害について、請求することを禁止しているのではなく、初めから○○したら○円!という契約をしてはダメという意味なんです。
これを間違って解釈して、「会社は社員に賠償請求をできないって労働基準法の第16条に書いてある!」って主張する人もいるわけです。
社員が勘違いするよくある事例2
他にもこんなこともよくあります。
皆さん、毎月社会保険料が給料から天引きされていますよね。
健康保険料と厚生年金保険料です。
この金額は基本的に、毎年4月・5月・6月に支払われた給料を元にして、その年の9月分~翌年8月分までの社会保険料が決まります。
この社会保険料について、社員がこんな主張をしてくることが結構あるんです。
「ネットで調べて計算したら、自分の社会保険料の等級が高くなりすぎている(もっと安いはずだ)」
先ほど説明したとおり、1年間の社会保険料を決定する手続きで「算定基礎届」というのがあって、4月・5月・6月に支払った賃金で保険料が決まります。
この賃金というのは、原則として残業代や歩合給などの月によって変わる手当も含めて手続きをしないといけないので、当事務所は法定通りに手続きをして保険料を届出してます。
それに対して、この苦情を入れてくる人はネットで調べたと言っているのにも関わらず、残業代や歩合給を入れずに計算しているようです。
確かに、社会保険料が高くなると手取りが減りますから、社員にとって大きな問題なので一生懸命調べるようですが、どうも自分有利に物事を解釈する傾向にあります。
社員が勘違いするよくある事例3
少し難しい話なんですが、一定の専門的業務を行う人について専門業務型裁量労働制という制度を使える場合があります。
その制度を活用する際は、使用者側と労働者代表が協定書を交わす必要があるんですが、その際にの労使協定の有効期間を3年間として作成したら
「有効期間は1年間までのはずだ」
と主張されることもあります。
そして、そのように言っている根拠を確認すると、なぜか36協定に関する行政通達を見ながら有効期間は1年までだと主張していたりするんです。
なぜこの時に36協定の通達を持ってくるの?って思いますが、そのあたりの事情はよく分からないんです。
ただ、確実に言えることは、「どれも完全に勘違いしている」ということです。
一般の人は、都合よく解釈したり誤った情報を鵜呑みにする
法律の解釈は非常に難しいですし、ネットの情報には誤ったものもたくさんあります。
私たち専門家が法律に関する事を調べる時は、法律に慣れている専門家ならではの常識というかカンというようなものがあって、誤った解釈や判断をしません。
そういった能力のおかげでネットの情報にあふれる誤った情報に出会った時も、「ん?この情報怪しい。もっと調べた方がいいな」と感じ取ることができます。
しかし、当然で仕方がないことではありますが、一般の人は法律知識がありません。
そのため、誤った情報でもそのまま吸収してしまいますし、解釈に関しても自分に都合のいいように解釈します。
これは仕方のないことなんですが、ある困った問題があります。
それは、義務も果たさないのに権利主張ばかりする人も上記のような誤った情報を信じていることが多いんです。
そんな誤った権利主張する人たちは、誤った情報を周りにまき散らしますし、自分は法的に正しいことを言っていると思い込んでいるので、やけに強気なんです。
こうなってしまうと、かなりめんどくさい。
一つ一つ説明するのもめんどくさいですが、一度説明して納得してもらえたように見えても、次に会ったときは以前の説明を完全に忘れ、勘違いした状態に戻っていることも珍しくありません。
こうした事例から学ぶ!
会社の規則などは分かりやすい言葉を使うことが大切
結局何が言いたいかといいますと、一般の人はとにかく勘違いをしたり、都合よく解釈したりしますし、難しい文面はよく分かりません。
ということは
就業規則の解釈も自分の都合の良いように行う傾向があるということです。
正直、「この文面をこんな風に解釈するのか!」と驚いたことがたくさんあります。
そんな場面に多く出会うことで、私も本当に勉強になりました。
就業規則は、内容を完璧に作りこむのが大切なのは当然ですが
とにかく誰が読んでもその意味を誤解しないように簡単な言葉で、分かりやすい就業規則にすることがすごく大切だと。
そうすることで、変な解釈を防いで、そこで起こる無駄なトラブルを減らせるな~としみじみ感じている今日この頃であります。
これからの就業規則は、そういった分かりやすさも重視して作らないといけません。
いろんなトラブルを無駄にせず、これからに活かすことが大切です。
本当に勉強になりますね。
おかげで当事務所が作成する就業規則など、ワンランク上の世界に進みました。
ありがたいことだ。