36協定で締結できる「延長することのできる時間」には国が定めた上限がありますが、限度時間が定められていない業種があると聞きました。具体的にはどの業種には限度時間が定められていないのでしょうか?

ご質問の内容はおそらく、「時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)」の事だと思われます。この基準には、限度時間が適用されない業務として4つが定義されています。

詳しくは、以下の説明をご覧ください。

もっと詳しく

注意
本記事は、大企業の場合は2019年3月31日まで、中小企業の場合は2020年3月31日まで有効です。2019年4月1日以後(中小企業の場合は2020年4月1日以後)の期間について定めた36協定では、新ルールに移行しますので、本記事の内容は使えません。
限度時間の適用除外に関する新ルールについてはこちらの記事をご覧ください。

国が定めた限度基準ですが、業務によっては適用されず、時間外労働時間の上限が定めれれていません。

その業種は、次のように定められています。

  1. 工作物の建設等の事業
  2. 自動車の運転の業務
  3. 新技術,新商品等の研究開発の業務
  4. 季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として厚生労働省労働基準局長が指定するもの

 

うーん。

 

あまりに抽象的で、すごく分かりにくいですよね。

 

このものすごく抽象的で分かりにくい点に関して、平成11年01月29日 基発45号で説明されています。

 

こちらもすごく分かりにくいですが、まずは原文をそのまま紹介します。

 

1.工作物の建設等の事業

 

「工作物の建設等の事業」とは、原則として法別表第一第三号に該当する事業をいうものとするが、建設業に属する事業の本店、支店等であって同号に該当しないものも含むものであること。

なお、建設業を主たる事業としない製造業等の事業であっても、例えば、大規模な機械・設備の据付工事等を行う場合は当該工事自体が法別表第一第三号に該当する一の事業となることがあるので留意すること。

また、電気事業の建設所、工事所等及びガス事業の導管管理事務所は法別表第一第三号に掲げる事業に該当するものであること。

 

 

うーん。分かりにくい。。

 

これをある程度翻訳してまとめると

 

「工作物の建設等の事業」とは、原則として「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業」ですよ。

だけど、建設業をやってる事業所はこれ以外のものも含みますよ。

ちなみに、建設業ではなく製造業などでも大規模な機械設置を行う場合などの場合にこの工事が対象になる場合がありますよ。

電気事業の建設所、工事所等、ガス事業の導管管理事務所の場合は、その事業が「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業」に当てはまる場合に対象になりますよ。

 

だいたいこんな感じでしょうか。

 

2.自動車の運転の業務

「自動車の運転の業務」とは、四輪以上の自動車の運転を主として行う業務をいい、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第七号)の対象となる自動車運転者の業務と同義であること。

 

今度は、いくらか読みやすいけど、やっぱり分かりにくいので翻訳してみました。

 

「自動車の運転の業務」とは、乗用車やトラックなど自動車の運転をメイン業務としている場合をいいますよ。

具体的にはどういう人かというと、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の対象者、つまり世間一般の従業員のうち四輪以上の自動車の運転をメイン業務としている人のことですよ。

 

こんな感じですかね。

 

3.新技術、新商品等の研究開発の業務

「新技術、新商品等の研究開発の業務」とは、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいうものとすること。

 

なんだか、まだまだ抽象的すぎますよね。

これをさらに具体的に言うと

 

  1. 自然科学、人文・社会科学の基礎的又は応用的な学問上、技術上の問題を解明するための試験、研究、調査
  2. 材料、製品、生産・製造工程等の開発又は技術的改善のための設計、製作、試験、検査
  3. システム、コンピュータ利用技術等の開発又は技術的改善のための企画、設計
  4. マーケティング・リサーチ、デザインの考察並びに広告計画におけるコンセプトワーク及びクリエイティブワーク
  5. その他1から4に相当する業務

 

やっぱり分かりにくいですが、結局のところ新しい技術開発やIT分野の開発、マーケティング広告の制作業務などの専門的な分野が当てはまるようです。

 

5に書いてあるように、1から4に相当する業務とありますので、上記だけにとらわれず説明がつきさえすれば、労基署を納得させることができます。(労基署を納得させるような作業、この辺りは当事務所のようなプロの仕事になります)

 

4.季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として厚生労働省労働基準局長が指定するもの

これも非常にややこしいです。

「季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業又は業務」とは、事業又は業務の特性と不可分な季節的要因等により事業活動又は業務量に著しい変動があり、かつ、その結果三箇月以内の期間における時間外労働が限度時間の範囲に収まらない場合が多く、特別条項付き協定で対処することになじまない事業又は業務をいうこと。「公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務」とは、公益事業における業務であって、当該事業の安全な遂行等を確保する上で集中的な作業が必要とされ、かつ、その結果三箇月以内の期間における時間外労働が限度時間の範囲に収まらない場合が多く、特別条項付き協定で対処することになじまない業務をいうこと。「季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業又は業務」及び「公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務」は、平成一一年一月二九日付け基発第四四号により指定されていること。

 

なんだかものすごく読みにくいですが、これらは具体的にどういった業務かが指定されています。

「季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業又は業務」は

  • 鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業(砂糖精製業を除く。)
  • 造船事業における船舶の改造又は修繕に関する業務
  • 日本郵便株式会社の行う郵便事業の年末・年始における業務
  • 都道府県労働局長が厚生労働省労働基準局長の承認を得て地域を限って指定する事業又は業務

 

「公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務」は

  •  電気事業における発電用原子炉及びその附属設備の定期検査並びにそれに伴う電気工作物の工事に関する業務
  • ガス事業におけるガス製造設備の工事に関する業務

 

となっています。

これまで説明した業務については、限度時間が定めれれていませんので、特別条項を入れることなく36協定を交わすことができます。

 

この際の記載方法などで悩んだ場合は、当事務所にご依頼いただければ対応することができますのでご連絡ください。