ご質問の内容はおそらく、「時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)」の事だと思われます。この基準には一般の労働者と1年単位の変形労働時間制の労働者で大きく分かれています。
詳しくは、以下の説明をご覧ください。
もっと詳しく
本記事は、大企業の場合は2019年3月31日まで、中小企業の場合は2020年3月31日まで有効です。2019年4月1日以後(中小企業の場合は2020年4月1日以後)の期間について定めた36協定では、新ルールに移行しますので、本記事の内容は使えません。
時間外労働させることができる時間としては、「時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)」で次のよう定められています。
期間 | 限度時間 |
1週間 | 15時間 |
2週間 | 27時間 |
4週間 | 43時間 |
1ヶ月 | 45時間 |
2ヶ月 | 81時間 |
3ヶ月 | 120時間 |
1年間 | 360時間 |
期間 | 限度時間 |
1週間 | 14時間 |
2週間 | 25時間 |
4週間 | 40時間 |
1ヶ月 | 42時間 |
2ヶ月 | 75時間 |
3ヶ月 | 110時間 |
1年間 | 320時間 |
限度基準は、1カ月と1年だけではない
上記の基準を見た会社の担当者は、こんな風に感じることも少なくありません。
「一般の労働者は、1カ月45時間までか」
「月によっては超えてしまうなぁ・・・」
「暇なときは、残業はほとんどないのに・・」
そんな会社でも上記の基準を上手く活用することでクリアすることができる場合があります。
多くの企業では、36協定で「延長することのできる時間」を定める際に「1日と1カ月と1年」について定めています。
でも、上記の限度時間を見てください。
そこで決められているのは「1週間、2週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、1年」の7パターンです。
別に1ヶ月で限度時間を決めないといけないわけではないのです。
2ヶ月でもいいし3ヶ月でもいいんです。
これらを上手く活用することでクリアできる事例を紹介したいと思います。
・3月が決算なので2月と3月にそれぞれ50時間の残業がある
・他の月は忙しくないので10時間程度の残業
このパターンだと、2月と3月は月に50時間の残業があるので1ヶ月の限度基準である45時間を超えています。
でも、他の月は10時間程度しか残業が無いので、これを上手く使います。
それは、「1日を超え3ヶ月以内の期間」を「3ヶ月」とする方法です。
3ヶ月であれば、基準は120時間。
2月と3月で合計100時間だったとしても1月が10時間であれば、合計110時間です。
たったこれだけで、限度基準を満たすことができます。
・3月が決算なので、毎日3時間の残業がある(週5日労働)
・他の月の残業は、1日1時間以内で月に20時間程度
この場合はどうでしょう。
3月は毎日3時間の残業があるので、1週間当たり15時間です。
1ヶ月にすると45時間を超えてしまいます。
ではどうするか?
この場合は、「1日を超え3ヶ月以内の期間」を「1週間」としてしまいましょう。
1週間の基準は15時間なので、ちょうど満たします。
たったこれだけです。
これだけで、限度基準を満たすわけです。
不思議ですよね。
他にもいくつかパターンはありますが、上記の事例だけでも考え方が分かると思いますので自社に活用できるのではないでしょうか。
限度基準を超えるからと言って、簡単に特別条項に逃げるのではなく、工夫でクリアできるかどうかを検討し、どうしても無理な場合のみ特別条項を使えば良いと考えます。